種子法廃止で日本の農と食はどうなる?

2017.05.12 Friday

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    マスコミではほとんど報道されていませんが、主要農作物種子法(種子法)廃止法案は2017年2月10日に閣議決定された後、十分な審議がされることなく、3月28日には衆議院を通過、4月14日に参議院本会議でも可決、成立してしまいました。 これによって種子法は来年4月1日に廃止されることが決定しました。

     

    ●種子法の意味

     種子法が何のために存在しているかと言えば、「種子法によって稲・麦・大豆の種子を対象として、都道府県が自ら普及すべき優良品種(奨励品種)を指定し、原種と原原種の生産、種子生産ほ場の指定、種子の審査制度などが規定される」 ためです。つまり、日本古来の原種や原原種の優良品種を都道府県が管理し、農家に提供せよ、という話になります。日本の食糧安全保障、食糧自給、そして食の安全を考えたとき、これは「当然の規制」だと思います。


     種子法の肝は、自治体などに対し、「その地域に合った作物の種」の開発・普及を義務づけている点です。すなわち、日本の食糧安全保障の肝である「種」について、単純に「ビジネス」と化すことはせず、農家に安価で優良な種を提供することを、種子法が各自治体に義務付けているのです。

     

    ●種子法は「遺伝子組み換え作物」の栽培を防ぐ防壁

      同時に、種子法は「遺伝子組み換え作物」の栽培としての普及を防ぐ防壁でもあります。一旦、遺伝子組み換え作物の栽培が始まり、遺伝子組み換え作物の花粉が空中を飛び、在来種と交配してしまう危険は、誰にも防ぐことができません。


     実際、遺伝子組み換え作物の栽培に否定的なメキシコであっても、主食であるトウモロコシの「在来種」であるはずの種子から、組換え遺伝子が発見されています。空中を散布する花粉を完全に防ぐことなど、誰にもできないのです。 


     日本が種子法を廃止し、将来的に遺伝子組み換え作物の「栽培」(※バラはすでに解禁されています)を認めた場合、最終的に日本の主食である米などが、遺伝子組み換えに全て汚染されてしまうという状況は否定できません。

     

    ●外資に乗っ取られる?日本のタネ

     アジア太平洋資料センターの内田聖子(しょうこ)事務局長がこう危ぶむ。(省略)では、種子法の廃止とは、どういう意味?

     

     「食料自給のため、自治体などにその地域に合った作物のタネの開発・普及を義務づけていたのが種子法です。しかし、種子法廃止が実現してしまうと、外資系の種子会社が参入し、日本のタネを独占することにもなりかねない。なかでもアメリカの農業大手『モンサント社』の遺伝子組み換え作物は、健康被害の可能性がいまだ払拭(ふっしょく)されていない。種子法廃止は、そうした作物のタネが日本に広まるきっかけをつくりかねないんです」 【週プレNEWS 2017.3.8.】

     

    ●「種を制したものは農業を制す」
     今、世界の種子産業を牛耳る多国籍企業は、稲の品種開発に強い関心を持っています。農産物の種子の特許も、多くがこれらの企業に握られています。「公共財」としての種子が環太平洋連携協定(TPP)などの交渉では知的財産権に位置づけられ、バイオ企業のもうけ拡大の有力な手段とされているのです。大手バイオ企業による種子支配はすでに、世界各地でさまざまな弊害を生み出しています。この下での種子法の廃止は、多国籍業がわが国の主食の生産や供給を廃する道を開き、食料の安全保障を危うくするものといわなければなりません。

     

    ●アメリカでは小麦、大豆のほとんどが遺伝子組み換えに

     米、麦については、種子産業が大きく発展してきたアメリカでも、州農業試験場や土地交付大学による公的な育種が重要な役割を果たしてきました。2010年の時点で、小麦の8割は自家採種で、残り2割のうち公共品種が6割を占めています。しかし、09年にモンサント社が小麦種子業者を買収するなど巨大企業の標的は小麦に向かっています。 大豆は、1980年の時点で公共品種が7割を占めていましたが、98年までに1割に減少し、現在は、モンサントやデュポンなどのバイオ企業4社で8割近くに達し、そのほとんどは遺伝子組み換えです。

     

     このアメリカでの前例を踏まえれば、日本でも公的育種、種子事業が短期間のうちに国内大手や巨大多国籍企業の種子ビジネスに置き換わってしまう可能性があります。

     長い目でみたとき、種子法の廃止は、主要食料を安定的に供給するためにこれまで築き上げてきた制度、体制を弱め、米・麦などの優良種子の供給が不安定になり、必要なときに手に入らなくなってしまうおそれがあるのです。

    (新聞「農民」2017.3.6付より)

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